大手メーカーの年収を比べるときは、金額の前に「誰の平均か」を確かめる必要があります。2026年3月期の有価証券報告書では、対象6社の平均年間給与は988万〜2,178万円ですが、グループ全員や若手社員の年収ではありません。[s1][s2][s3][s4][s5][s6]
本記事では、提出会社とグループの違い、給与差の背景を読む際の限界、制度と実際の働き方の確認方法を整理します。ランキングを応募先選びの入口にしながら、自分の職種・勤務地・年収の内訳へ調査を進めます。
情報は2026年10月30日時点のものです。制度・労働条件・統計は変わることがあります。出典は記事末尾にまとめています。
転職・退職の判断は、ご自身の状況に合わせて行ってください。労働条件のトラブルは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーで相談できます。記事中の人物・会社・試算は、特記のない限り説明のための例です。
- 6社の平均年間給与で1,000万円を超えるのは4社ですが、賞与などを含む提出会社の平均です。
- ソニーグループとパナソニックHDの数値を、グループの事業会社の年収として読むことはできません。
- 求人を比べるときは、雇用元の会社・職種・勤務地・給与の内訳と制度の利用条件を確かめます。
基礎知識:有価証券報告書の平均年間給与の読み方
本記事で扱う平均年間給与は、各社の有価証券報告書の「提出会社の状況」に記載された金額です。子会社を含む連結グループ全体の平均とは集計範囲が異なります。[s1][s2][s3][s4][s5][s6]
給与には賞与や基準外賃金を含み、毎月の基本給だけを示していません。対象者の年齢構成も異なるため、新卒や転職者が同額を受け取るという意味にはなりません。[s1][s2][s3][s4][s5][s6]
持株会社の給与は、同じブランドで事業を行う別会社の給与とは分けて読みます。制度の紹介ページも、応募する会社と職種に適用される内容かを確認する必要があります。[s2][s6][s8][s9]
6社中4社が平均1,000万円超でも、若手の給与ではない
金額を読む前に、集計の年度と範囲をそろえることが必要です。以下は2026年3月期の提出会社の平均年間給与で、万円未満を四捨五入しています。[s1][s2][s3][s4][s5][s6]
2026年3月期・提出会社単体の平均年間給与
平均年間給与(2026年3月期・提出会社)
出典:各社の有価証券報告書(2026年3月期)。万円未満は四捨五入
キーエンスは2,178万円、ソニーグループは1,155万円、三菱重工業は1,072万円です。トヨタ自動車は1,006万円、日立製作所は995万円、パナソニックHDは988万円で、1,000万円を超えるのは6社のうち4社となります。[s1][s2][s3][s4][s5][s6]
平均年齢はキーエンスが35.0歳で、ほかの5社は40.5〜44.1歳です。経験年数の長い社員も含む平均なので、入社時の提示年収を推定するには、応募する職種や等級の給与条件を別に確認する必要があります。[s1][s2][s3][s4][s5][s6]
国税庁の令和7年分民間給与実態統計調査では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円、正社員は559万円、製造業は573万円です。同調査の第8表から計算した年収1,000万円超の割合は製造業で9.4%、全業種で6.6%ですが、企業別平均とは対象者の構成が異なります。[s7]
持株会社の平均をグループ全員に当てはめない
とくに注意が必要なのは、持株会社と事業会社の区別です。ソニーグループとパナソニックHDの平均給与は、それぞれ本体に所属する社員の数字であり、グループの現場全体を示していません。[s2][s6]
提出会社の従業員数を連結従業員数で割った試算
本体の人数は、グループ全体の何%?
出典:各社の有価証券報告書(2026年3月期)。提出会社÷連結の従業員数の試算
ソニーグループは提出会社2,166人に対して連結94,900人で、人数の比率を計算すると約2.3%です。パナソニックHDも提出会社1,431人に対して連結183,685人で約0.8%となり、本体の平均だけでは大多数の社員を説明できません。[s2][s6]
同じ有価証券報告書には、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの平均年間給与が761.9万円、パナソニック株式会社が861.6万円と記載されています。仕事内容や構成の異なる会社の比較なので、応募時はブランド名に加えて、雇用契約を結ぶ法人名を確認してください。[s2][s6]
利益や年齢構成は背景を読む材料で、給与差の原因とは断定できない
なぜ企業間で給与が異なるかは、年収ランキングだけでは分かりません。キーエンスの直販体制やファブレス体制、各社の収益構造は背景を考える材料ですが、それが給与差を直接生んだと有価証券報告書から断定することはできません。[s1]
利益率の比較は会計基準と事業の違いに注意
営業利益率(2026年3月期)
出典:各社の有価証券報告書。トヨタは営業利益÷営業収益の試算。会計基準がちがう
キーエンスの営業利益率は51.0%で、トヨタの営業利益を営業収益で割った試算は7.4%です。会計基準や事業構成が異なるため、この差をそのまま待遇の優劣や個人の生産性として読むことはできません。[s1][s4]
年齢と勤続年数にも構成の違いがあります。キーエンスは平均35.0歳・勤続11.3年、日立は42.2歳・18.1年、パナソニックHDは44.1歳・18.6年ですが、これだけで年齢と給与の因果関係は判断できません。[s1][s5][s6]
在宅勤務や休日は、制度の有無と利用条件を一緒に調べる
働き方は会社名だけでは決まらず、職種や配属先によって確認事項が変わります。研究開発なら実験日の出社、生産技術なら現場対応、製造職なら交替勤務、営業なら訪問や出張の有無を求人ごとに確かめることが大切です。
日立の採用情報では、スーパーフレックスや在宅・サテライト勤務の制度が紹介されています。三菱重工も在宅勤務やコアタイムのないフレックスを案内していますが、適用対象や部門の条件まで読む必要があり、制度があるだけで自分が利用できるとは限りません。[s8][s9]
キーエンスの休日と有給取得率
キーエンス
公式サイトの記載より
キーエンスの公式情報では、2025年度の年間休日は128日、2026年公表の有給休暇取得率は38.8%です。会社休日と有給休暇は別の指標なので、どちらか一方で休みやすさを判断せず、対象年度と集計範囲も確認します。[s10]
残業時間も同じ条件で比べる必要があります。厚生労働省のしょくばらぼでは残業時間や有給休暇取得率などを調べられますが、掲載企業や登録情報には限りがあるため、求人票や面談の情報と照合してください。[s13]
平均給与は変動するため、提示年収の内訳を確かめる
平均年収が高い企業でも、毎年同じ金額になるとは限りません。キーエンスの公式公表値は2023年2,279万円、2024年2,067万円、2025年2,039万円、2026年2,178万円と動いています。[s10]
平均年間給与の推移は個人の給与変化ではない
キーエンスの平均年間給与
出典:キーエンス 公式サイトの非財務情報、有価証券報告書
この推移は集計対象全体の平均であり、同じ社員の給与が同額だけ増減したことを示していません。転職時は基本給、賞与、残業代の扱いを分け、変動部分を含めなくても生活費を賄えるかを確認すると判断しやすくなります。
勤務地と異動の範囲も入社前に確認したい条件です。求人票の勤務場所だけでなく、配属後の変更範囲や限定条件を確認し、労働条件に不明点やトラブルがあれば総合労働相談コーナーなどの窓口を利用してください。
応募先を調べるときは、会社の平均から自分の条件へ進む
調査は、有価証券報告書で雇用元の会社と従業員の状況を確かめ、採用ページで制度の対象者と条件を読む順に進めます。そのうえで、しょくばらぼの職場情報と求人票を照合すると、追加で質問する点を整理できます。[s13]
公表資料を読み、面談で確認する
会社を調べる4ステップ
従業員の状況で本体と連結
対象者・条件を読む
残業時間・有給取得率
職種・勤務地・年収の内訳
面談では「この職種の基本給と賞与の範囲」「予定される勤務地と異動の範囲」「在宅勤務制度の対象と運用」を具体的に尋ねます。自分が重視する条件を先に決め、会社全体の平均年収を、自分の提示条件と取り違えないことが大切です。
実践のポイント・まとめ
出典・参考文献
- [s1] キーエンス「有価証券報告書 2026年3月期」(EDINET DB) ↗ edinetdb.jp
- [s2] ソニーグループ「有価証券報告書 2026年3月期」 ↗ edinetdb.jp
- [s3] 三菱重工業「有価証券報告書 2026年3月期」 ↗ edinetdb.jp
- [s4] トヨタ自動車「有価証券報告書 2026年3月期」 ↗ edinetdb.jp
- [s5] 日立製作所「有価証券報告書 2026年3月期」 ↗ edinetdb.jp
- [s6] パナソニックホールディングス「有価証券報告書 2026年3月期」 ↗ edinetdb.jp
- [s7] 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」 ↗ nta.go.jp
- [s8] 日立「勤務制度・働き方」(採用ページ) ↗ hitachi.com
- [s9] 三菱重工「ワークスタイル・福利厚生」(新卒採用ページ) ↗ mhi.com
- [s10] キーエンス「社会(サステナビリティ)」 ↗ keyence.co.jp
- [s11] トヨタ「コーポレート・ガバナンス報告書」 ↗ global.toyota
- [s12] ソニー「経験者採用 募集要項」 ↗ sony.co.jp
- [s13] 厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」 ↗ shokuba.mhlw.go.jp
- [s14] 最高裁判所 昭和61年7月14日判決(東亜ペイント事件) ↗ courts.go.jp
検証ファクト一覧を表示する(全21項目)
| ID | 確認した事実・仕様 | 出典 | 注意・補足 |
|---|---|---|---|
| F1 | 平均年間給与(2026年3月期・提出会社):キーエンス 2,178万円・ソニーG 1,155万円・三菱重工 1,072万円・トヨタ 1,006万円・日立 995万円・パナHD 988万円 | [s1] [s6] | |
| F2 | 平均年齢:キーエンス 35.0歳、ソニーG 42.7、三菱重工 42.3、トヨタ 40.5、日立 42.2、パナHD 44.1 | [s1] [s6] | |
| F3 | キーエンスの平均年間給与はパナソニックHDの約2.2倍 | [s1] [s6] | 試算(割り算) |
| F4 | 提出会社の人数は連結の:パナHD 0.8%・ソニーG 2.3%・日立 9.0%・トヨタ 18.7%・キーエンス 25.9%・三菱重工 29.7% | [s1] [s6] | 試算(割り算)。持株会社は本社機能の人が中心 |
| F5 | ソニーのソニーセミコンダクタマニュファクチャリング㈱は761.9万円(9,265人)、パナソニック㈱は861.6万円(14,500人) | [s2] [s6] | |
| F6 | 国税庁:民間の平均給与487万円、正社員559万円、製造業573万円(令和7年分) | [s7] | |
| F7 | 年収1,000万円超の割合:製造業 9.4%、全業種 6.6%(令和7年分、1年を通じて勤務した給与所得者) | [s7] | 給与階級別の人数から計算 |
| F8 | キーエンスの営業利益率は51.0%(営業利益 5,958億円 ÷ 売上高 1兆1,693億円)、トヨタは7.4%(試算) | [s1] [s4] | |
| F9 | キーエンスは「グローバル直販体制」「ファブレス体制」と有報に書いている | [s1] | |
| F10 | 連結営業利益 ÷ 連結従業員数:キーエンス 約4,660万円、トヨタ 約963万円 | [s1] [s4] | 試算。社員1人の稼ぎではない |
| F11 | キーエンスの平均年間給与:2023年 2,279万円 → 2024年 2,067万円 → 2025年 2,039万円 → 2026年 2,178万円 | [s10] | |
| F12 | トヨタ:営業利益 △21.5%、平均年間給与 +2.4% | [s4] | |
| F13 | 日立:スーパーフレックス(対象者・条件あり)、在宅・サテライト勤務は回数制限なし、有給は1年目から24日 | [s8] | |
| F14 | 三菱重工:在宅勤務は所属長が認めた者全員、フレックスは一部の部門を除きコアタイムなし | [s9] | |
| F15 | ソニー㈱の経験者採用:フレックスタイム制あり(コアタイムなし)。テレワークの明確な規定は確認できず | [s12] | |
| F16 | トヨタ:在宅勤務・テレワークの利用者を、生産職を除く時間管理対象者の50%以上にする目標(2025年時点) | [s11] | |
| F17 | キーエンス:2025年度の年間休日128日、GW・夏季・冬季は各8〜9連休。有給休暇取得率38.8%(2026年の公表値) | [s10] | |
| F18 | 連結従業員の減少:パナHD △23,863名、ソニーG 約△17,400名 | [s6] [s2] | |
| F19 | トヨタは日野自動車が2026年4月1日に連結子会社から除外(三菱ふそうトラック・バスとの経営統合) | [s4] | |
| F20 | 使用者は業務上の必要に応じ裁量で勤務場所を決められるが、無制約ではない(東亜ペイント事件。結論は会社の勝ち) | [s14] | |
| F21 | しょくばらぼ:残業時間・有給休暇取得率・平均年齢などの職場情報を検索・比較できる(掲載企業152,380件) | [s13] |
※ 情報確認日は2026年10月30日です。平均年間給与は2026年3月期の提出会社単体の数値で、賞与・基準外賃金などを含みます。
※ 給与の万円表示は四捨五入です。提出会社と連結の人数比率、営業利益率の一部、国税庁の給与階級割合は公表数値に基づく計算・試算です。
※ 職種ごとの確認事項は一般的な整理です。具体的な労働条件や制度の対象は、応募する会社・求人で確認してください。
※ 本記事は転職先や特定企業を推奨するものではありません。平均給与の比較だけで個人の年収や労働条件は判断できません。