出社回帰で在宅勤務は終わるのか——実施率・成果・求人の見方

出社回帰で在宅勤務は終わるのか——実施率・成果・求人の見方

Amazon、Microsoft、LINEヤフーなどが出社日数を増やし、「フルリモート終了」と感じる人もいます。一方、正社員のテレワーク実施率はコロナ前より高く、職種や会社による差も大きいままです。

本記事では、出社回帰の実態、会社が挙げる理由、ハイブリッド勤務の研究、通勤時間を整理します。在宅勤務を続けたい人が、求人票と面接で確認すべき条件もまとめます。

情報は2026年10月13日時点のものです。制度・労働条件・統計は変わることがあります。出典は記事末尾にまとめています。

転職・退職の判断は、ご自身の状況に合わせて行ってください。労働条件のトラブルは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーで相談できます。記事中の人物・会社・試算は、特記のない限り説明のための例です。

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この記事のポイント
  • 正社員のテレワーク実施率は2026年7月に21.4%で、2022年のピークから緩やかに低下しています。
  • 週2日在宅の実験では離職が減り、評価・昇進に差はありませんでしたが、1社のハイブリッド勤務の結果です。
  • 「リモート可」だけでなく、出社頻度、変更権限、勤務地の変更範囲を確認する必要があります。

在宅勤務の数字を読むための基礎知識

テレワーク実施率は、調査対象、時点、「現在している」か「1年に1回でもした」かで数字が変わります。異なる調査の割合をそのまま増減として比べることはできません。[s1][s2]

フルリモートは原則として出社しない働き方、ハイブリッドは週の一部を在宅にする働き方です。同じ「テレワーク」でも、会社や職種によって出社頻度が異なります。

厚生労働省のガイドラインは、テレワークの費用負担や評価方法を労使で決めるよう求めています。在宅の頻度を本人に委ねる場合、出社したことだけを理由に高く評価するのは適切ではありません。[s11]

主要キーワード・用語の定義
フルリモート
通常の勤務で出社を求めない働き方です。例外出社の条件は会社ごとに異なります。
ハイブリッド勤務
出社と在宅勤務を組み合わせる働き方です。
勤務地の変更範囲
採用後に会社が変更し得る就業場所の範囲です。2024年4月から求人時の明示事項に加わりました。[s12]

テレワークは減ったが消えてはいない

パーソル総合研究所の調査では、正社員のテレワーク実施率は2022年2月の28.5%をピークに、2026年7月は21.4%へ低下しました。それでもコロナ前の2020年3月13.2%を上回っています。[s1]

正社員のテレワーク実施率の推移

グラフ

正社員のテレワーク実施率

2020年3月
13.2
2020年4月
27.9
2022年2月
28.5
2024年7月
22.6
2025年7月
22.5
2026年7月
21.4
2022年をピークに ゆっくり減少

パーソル総合研究所「テレワークに関する調査(2026年)」

同じ調査で「原則出社」の指示がある正社員は24.6%となり、2年続けて増えました。一方、テレワーク実施者の81.6%は今後も続けたいと回答しています。[s1]

フルリモート・ハイブリッド・原則出社

要点

働き方の3つの形

フルリモート

毎日家で。出社なし

ハイブリッド

週に何日か家で

原則出社

ふだんは会社で

毎日在宅の人はテレワーク実施者の14.5%で、正社員全体では約3%という計算になります。多くの人にとって、在宅勤務は完全在宅よりハイブリッドとして残っています。[s1]

大企業が出社を増やす理由

Amazonは2025年1月から原則週5日出社とし、文化、発明、学び、チームのつながりを理由に挙げました。Microsoftは本社地域で週3日、LINEヤフーも段階的に原則週3回へ方針を変えています。[s3][s4][s5][s6][s7]

大企業の出社方針の例

年表・推移

大きな会社の出社の方針

2025/1
Amazon 原則 週5日
2025/4
LINEヤフー 週1回・月1回
2026/2
Microsoft 週3日(本社地域)
2026/4
LINEヤフー 週3回へ(発表)

各社の発表より

これらは各社の発表であり、すべての会社で出社の成果が高いと証明するものではありません。業務内容、新人育成、設備、顧客対応、セキュリティによって必要な対面時間は変わります。

テレワークで感じる評価と意思疎通の不安

グラフ

テレワークの困りごと・不安(正社員)

部下が見えない 上司が答えた
37.1
気持ちが不明 相手の気持ちがわかりにくい
37.1
サボりと誤解 と思われていないか不安
29.9
評価が不安 公平に評価されるか
28.8
上司も部下も、見えなくて不安

パーソル総合研究所の調査(テレワークをしている正社員1,000人)

パーソル総研の調査では、部下の様子が分からないと答えた上司が37.1%、公平な評価への不安が28.8%でした。出社回帰は、生産性だけでなく「見えない」「話しにくい」という管理上の不安への対応でもあります。[s1]

週2日在宅の実験では離職が減った

Natureに掲載された研究は、中国のTrip.comの従業員1,612人を誕生日の奇数・偶数で分け、週2日在宅と週5日出社を6か月比較しました。離職率は出社群7.2%に対し、在宅群4.8%でした。[s8]

週2日在宅と週5日出社の離職率

グラフ

6か月で辞めた人の割合

週5日 出社
7.2
週2日 在宅
4.8
辞めた人が 3分の1へった

Bloom ほか(Nature, 2024年)

2年間の評価、昇進、コード量には有意な差がありませんでした。ただし、中国の1社で行ったハイブリッド勤務の結果で、フルリモートや別の職種へそのまま一般化できません。[s8]

出社回帰は出社の絶対的優位を意味しない

キーワード 出社回帰 ≠ 出社が必ず上

仕事の中身・チーム・新人かベテランかで変わる

別の研究では、近くに座ることでエンジニアのコードへの助言が18.3%増え、若手は恩恵を受ける一方、ベテランは教える分だけ自分のコード量が減りました。対面の効果は立場によっても異なります。[s9]

通勤時間も待遇として計算する

総務省の2021年調査では、平日の通勤・通学は往復で全国平均1時間19分、東京1時間35分、神奈川1時間40分でした。在宅の日は通勤が1時間3分減り、睡眠が18分、趣味が16分、仕事が13分増えています。[s10]

平日の往復通勤時間

グラフ

平日の通勤・通学の時間(往復の平均・2021年)

全国
1時間19分
東京都
1時間35分
神奈川県
1時間40分
東京・神奈川は 1時間半以上

総務省「令和3年社会生活基本調査」(平日に通勤・通学をした人)

片道30分の通勤が週5日増えると、年240日勤務の例では年240時間になります。求人比較では年収だけでなく、出社日数と通勤時間を年単位へ換算します。

在宅勤務を続けるための求人確認

求人票では「リモート可」だけで判断せず、現在の出社頻度、試用期間、居住地域、会社が頻度を変える条件を確認します。勤務地と、その変更範囲も読みます。[s12]

求人と面接で確認する項目

要点

面接で聞いておきたい4つ

日数

在宅は週に何日?

最初

研修・試用期間は?

場所

住む所の決まりは?

評価

在宅でも公平?

面接では、チームの実施率、評価方法、オンライン会議のルール、入社直後の出社頻度を尋ねます。制度があっても職種ごとに違う場合があるため、配属予定部署の運用を確認します。

在宅勤務では、成果、進捗、相談事項を短く共有し、見えにくさを減らします。働き方の条件が説明と異なる場合は、人事や総合労働相談コーナーへ相談できます。[s15]

まとめ

在宅勤務はピークから減少し、原則出社の指示は増えていますが、テレワーク自体が消えたわけではありません。成果は出社か在宅かだけでなく、仕事、チーム、育成段階で変わります。

働き方を選ぶ三つの基準

出社回帰のいま
  • 在宅は消えていない。でも出社を求める会社は増えている
  • 会社の理由は話す・作る・育てる。家だと成果が下がる、とは限らない
  • これからは、仕事と会社で働き方を選ぶ時代

求人票では頻度、変更権限、勤務地の範囲を確認し、通勤時間も待遇へ含めます。完全在宅だけに絞らず、自分に必要な対面時間と生活時間のバランスを決めてください。

実践のポイント・まとめ

POINT 1

出社頻度を年単位で確認する

週何日かだけでなく、試用期間、繁忙期、会社が方針を変える条件まで確認します。

POINT 2

通勤時間を待遇へ含める

往復時間と出社日数を掛け、年間で失う時間を年収と一緒に比べます。

POINT 3

リモート時の成果を見える形にする

成果、進捗、相談事項を定期的に共有し、評価者との認識差を減らします。

出典・参考文献

検証ファクト一覧を表示する(全18項目)
ID 確認した事実・仕様 出典 注意・補足
F1 正社員のテレワーク実施率 2026年7月 21.4%(前年 −1.1pt)、2022年2月 28.5% がピーク、2020年3月 13.2% [s1]
F2 「原則出社の指示」24.6%、2年続けて増加(21.5 → 20.9 → 22.8 → 24.6%) [s1]
F3 テレワーカーのうち「毎日(出社無し)」14.5% → 正社員の約3%(計算の目安) [s1] かけ算は自分の計算
F4 テレワーク実施者の81.6%が「続けたい」(やや続けたい込み) [s1]
F5 国交省:直近1年間のテレワーク実施率 16.8%(+1.2pt)、増加に転じた [s2]
F6 Amazon:2025年1月2日から原則週5日オフィス、理由は文化・発明・学び・つながり、例外あり [s3]
F7 Microsoft:週3日、ピュージェット湾地域は2026年2月末まで、「thank you Teams!」、データは会社の言い分 [s4]
F8 LINEヤフー:2025年4月 週1回・月1回 → 2026年4月 原則週3回へ段階的に [s5] [s6] [s7]
F9 Nature:1,612人、奇数・偶数の誕生日、週2在宅、離職 7.2 → 4.8%、評価・昇進に差なし [s8]
F10 近くに座るとフィードバック +18.3%、若手が得、ベテランは自分のコードが減る [s9] 米国の1社のエンジニア
F11 通勤(往復・平日)全国 1時間19分、神奈川 1時間40分、東京 1時間35分 [s10]
F12 在宅の日:通勤 −1時間3分、睡眠 +18分、趣味 +16分、仕事 +13分 [s10]
F13 職種別:IT系技術職 56.9%、コンサルタント 46.0%、経営企画 45.4%、製造(組立・加工)4.5% [s1]
F14 困りごと:評価への不安 28.8%、さぼっていると思われる不安 29.9%、部下の様子がわからない 37.1% [s1]
F15 テレワークのルールは労使で決める、費用負担、出社を理由に高く評価するのは不適切(頻度が社員にまかされている場合など)、就業場所・変更の範囲に自宅など [s11]
F16 2024年4月から求人にも「就業場所の変更の範囲」 [s12]
F17 さくらインターネット:実施率89.9%(2024年3月)、データセンターの仕事は現地 [s13] 会社の発表
F18 転職エージェントの報酬は採用した会社が払う [s14]

※ テレワーク実施率は調査対象、時点、定義が異なるため、別調査の数字を単純比較できません。

※ 週2日在宅の研究は中国の1社によるハイブリッド勤務の結果で、フルリモートや全職種に当てはまるとは限りません。

※ 大企業の出社理由は各社の説明であり、独立した検証結果ではありません。

※ 通勤の年240時間は片道30分増、年240日勤務とした作った例です。