昇進で月収が減るのはなぜ? 残業代と管理監督者の条件

昇進で月収が減るのはなぜ? 残業代と管理監督者の条件

役職が上がっても、残業代を含めた月収まで必ず増えるとは限りません。基本給と役職手当が増えても、時間外手当の扱いで総額が変わるためです。

本記事では、架空の給与比較と厚生労働省の資料から、社内の管理職と法律上の管理監督者の違いを整理します。昇進の返事をする前に確認したい条件も紹介します。

情報は2026年10月20日時点のものです。制度・労働条件・統計は変わることがあります。出典は記事末尾にまとめています。

転職・退職の判断は、ご自身の状況に合わせて行ってください。労働条件のトラブルは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーで相談できます。記事中の人物・会社・試算は、特記のない限り説明のための例です。

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この記事のポイント
  • 月収は基本給・役職手当・残業代を分けて比較します。
  • 管理監督者に当たるかは、肩書きだけでは決まりません。
  • 昇進前に権限・労働時間・賞与を含む待遇を確認します。

基礎知識:管理監督者

労働基準法上の管理監督者は、職務や権限、勤務の裁量、待遇などの実態から判断されます。社内で管理職と呼ばれる人が、自動的に該当するわけではありません。

賃金統計の所定内給与は、残業代などの超過労働給与を含みません。給与明細の総支給額と比較する際には、含まれる項目をそろえます。

額面は税金や社会保険料などを差し引く前の金額です。本記事の給与例は額面であり、手取り額の比較ではありません。

主要キーワード・用語の定義
管理監督者
労働基準法上の管理監督者は、職務や権限、勤務の裁量、待遇などの実態から判断されます。社内で管理職と呼ばれる人が、自動的に該当するわけではありません。
所定内給与
賃金統計の所定内給与は、残業代などの超過労働給与を含みません。給与明細の総支給額と比較する際には、含まれる項目をそろえます。
額面と手取り
額面は税金や社会保険料などを差し引く前の金額です。本記事の給与例は額面であり、手取り額の比較ではありません。

統計の平均と自分の月収は別に考える

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、課長級の所定内給与は月52.9万円、係長級は39.9万円でした。平均年齢や勤続年数の異なる集団の比較であり、同じ人が昇進したときの増額ではありません。[s5]

役職別の所定内給与

グラフ

役職別の月給の平均(男女計・所定内給与)

非役職者 平均41.8歳
31.1
係長級 平均45.4歳
39.9
課長級 平均49.5歳
52.9
部長級 平均53.1歳
63.6
平均では、役職が上がるほど月給が高い

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」第8表(企業規模10人以上・雇用期間の定めのない一般労働者)

この統計には残業代が含まれません。残業代を含めた月収がどう変わるかは、自分の給与項目と昇進後の制度を確認する必要があります。[s5]

残業代がなくなる場合の試算

架空の例として、基本給32万円に残業代10万円が加わり、月収42万円の人を考えます。所定労働時間160時間、残業40時間、割増率25%とする簡易な試算です。

昇進前後の額面を同じ条件で比較

比較表

時給に直すと(試算)

項目一般社員課長
月収42万円37万円
働く時間200時間200時間
1時間あたり2,100円1,850円

※試算(月収÷200時間)。賞与・手取りは除く

昇進後が基本給33万円と役職手当4万円で、残業代が出ない適法な運用だと仮定すれば、月収は37万円になります。賞与や手取りは含まず、同じ時間働くという前提の試算であり、昇進で一般に損をするという意味ではありません。

管理職と管理監督者を混同しない

厚生労働省は、職務内容と責任・権限、労働時間の裁量、地位にふさわしい待遇などから実態を判断すると説明しています。課長やリーダーという名称だけで、時間外手当の支払いが不要になるわけではありません。[s2]

管理監督者の判断で見る実態

要点

管理監督者の判断の目安(厚労省)

責任と権限

経営者と一体的な立場

勤務の裁量

出退勤など時間の裁量

待遇

地位にふさわしい賃金

管理監督者でも深夜の割増賃金や年次有給休暇は別に扱われます。また、給与が減ったという事実だけで違法かどうかを判断できるものでもありません。[s2][s3]

昇進の前に待遇と権限を書面で確認する

基本給・役職手当・時間外手当の扱いに加え、賞与の算定や担当業務、裁量の範囲を確認しましょう。年収と労働時間を合わせて比べると、月収だけでは分からない条件が見えてきます。

返事の前に確認する項目

手順

昇進の返事の前に確認する5つ

STEP 1
役職手当は何の手当?

金額と、残業代の代わりか

STEP 2
残業代の扱い

深夜手当は出るか

STEP 3
基本給・賞与

ボーナスへの影響

STEP 4
権限と時間の裁量

決められること

STEP 5
時給に直す

今の働き方で比べる

判断に迷う場合は給与規程や勤務記録をそろえ、総合労働相談コーナーなどに相談できます。個別の管理監督者該当性は、実際の権限や勤務状況を踏まえて確認する必要があります。[s7]

実践のポイント・まとめ

POINT 1

昇進で月給アップ? 時給で比べる

みっつめ。割って、昇進前と後で比べます。賞与や手取りは別だから、そこも合わせて確かめましょう。

1分のショート動画で見る
POINT 2

「課長だから残業代なし」 と言われたら?

ただし、判断は実態しだい。ここでは断定できません。迷ったら、総合労働相談コーナー。無料で、予約もいりません。

1分のショート動画で見る
POINT 3

管理職なら 夜中に働いても割増なし?

もし深夜に働いているのに、明細に出ていなければ、会社に確かめましょう。解決しないときは、総合労働相談コーナーに相談できます。

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POINT 4

昇進の返事の前に 聞く1つのこと

返事は、確かめてからで大丈夫。迷ったら、総合労働相談コーナーに相談できます。

1分のショート動画で見る

出典・参考文献

検証ファクト一覧を表示する(全13項目)
ID 確認した事実・仕様 出典 注意・補足
F1 アデコ「管理職という仕事に関する調査」:2026年3月19〜24日にインターネットで実施、20〜60代の会社員1,400人(一般社員800人・管理職600人)。2026年9月2日発表 [s1] 会社の調査
F2 一般社員の71.7%が管理職は損(損のみで得はない12.6%+得よりも損のほうが多い59.1%)。管理職本人は59.9%(9.2%+50.7%)。一般社員の76.7%が将来管理職になりたくない(なりたくない41.8%+どちらかといえば34.9%) [s1]
F3 令和7年賃金構造基本統計調査(残業代を含まない所定内給与・月額・男女計):部長級63.6万円・課長級52.9万円・係長級39.9万円・非役職者31.1万円。非役職者を100とすると課長級は170.4 [s5] 平均。同じ人が昇進して上がった額ではない
F4 管理監督者(労基法41条2号)は、労働時間・休憩・休日の規定が適用されない。「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」で、名称にとらわれず実態で判断する。管理職と呼ばれる地位に至った労働者が直ちに管理監督者に該当するものではない [s2] [s4] [s6]
F5 判断の目安は3つ:①地位・職務内容・責任と権限(経営者と一体的な立場) ②勤務態様(出退勤など労働時間の裁量) ③賃金(基本給・手当・賞与)がその地位と権限にふさわしい [s2] [s4]
F6 「課長」「リーダー」の肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くを上司に決裁を仰ぐ人や、上司の命令を部下に伝えるだけの人は、管理監督者とは言えない [s2]
F7 管理監督者に当たらない場合は、時間外割増賃金・休日割増賃金の支払が必要 [s2]
F8 管理監督者でも、深夜(22時〜翌5時)の割増賃金は支払う。年次有給休暇も一般労働者と同様。長時間労働なら医師の面接指導などが必要になる場合がある [s2]
F9 店長についての通達の否定要素:遅刻・早退で減給や不利益な評価(勤務態様)/長時間労働の結果、時間単価に直した賃金がアルバイト・パート等に満たない(重要な要素)/基本給・役職手当などの優遇が、割増賃金が出なくなることを考えると十分でない(補強要素)。1つでも当てはまれば管理監督者でない可能性が大きい。ただし、当てはまらなければ管理監督者、とは言えない [s2] [s3]
F10 日本マクドナルド事件(東京地裁 2008年1月28日):店長は管理監督者に当たらないと判断。権限は店舗内に限られる・労働時間の自由裁量がない・賃金は十分といい難い、が理由 [s4]
F11 厚労省は、十分な権限や相応の待遇がないのに管理監督者として長時間労働をさせる事案を「名ばかり管理職」と呼び、範囲の適正化を図ると述べた(2008年) [s3]
F12 残業代(割増賃金)の率:時間外は25%以上、月60時間を超える部分は50%以上、深夜は25%以上。割増の基礎賃金に入らないのは家族手当・通勤手当など [s6]
F13 総合労働相談コーナー:職場のトラブルの相談を無料・予約不要で受ける。全国に設置 [s7]

※ 月収42万円から37万円への比較は架空の試算です。所定160時間・残業40時間・割増25%、昇進後も同じ時間働き、残業代が出ない運用が適法な場合を仮定しています。賞与・税金・社会保険料は含みません。

※ 役職別の統計は所定内給与の平均です。同じ人の昇給額や、残業代を含む月収ではありません。