優しい上司のもとで成長できる? 安心感と育成の機会を考える

優しい上司のもとで成長できる? 安心感と育成の機会を考える

質問しやすく、叱責も少ない職場でも、経験が増えているか不安になることがあります。上司の優しさと、仕事を通じた成長の機会は、分けて確認できる条件です。

本記事では、若手と管理職の調査、厚生労働省の指針から、安心して働ける環境と具体的なフィードバックを両立する考え方を整理します。上司の性格だけで離職の理由を決めつけるものではありません。

情報は2026年10月19日時点のものです。制度・労働条件・統計は変わることがあります。出典は記事末尾にまとめています。

転職・退職の判断は、ご自身の状況に合わせて行ってください。労働条件のトラブルは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーで相談できます。記事中の人物・会社・試算は、特記のない限り説明のための例です。

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この記事のポイント
  • 優しさと育成機会の有無を同じものとして扱いません。
  • 若手全体と「ゆるい」と感じる若手の割合を区別します。
  • 指導は具体的な業務改善の話として依頼できます。

基礎知識:フィードバック

仕事の結果だけでなく、良かった行動と改善点を具体的に振り返ることです。次の仕事で何を変えるかまで相談できると、行動につなげやすくなります。

新入社員、若手社員、管理職では、調査の対象や質問が異なります。割合を比べるときは、誰への質問かを先に確認します。

業務上必要かつ相当な範囲の指導とハラスメントは区別されます。実際の言動と状況を踏まえて考える必要があります。

主要キーワード・用語の定義
フィードバック
仕事の結果だけでなく、良かった行動と改善点を具体的に振り返ることです。次の仕事で何を変えるかまで相談できると、行動につなげやすくなります。
調査の対象者
新入社員、若手社員、管理職では、調査の対象や質問が異なります。割合を比べるときは、誰への質問かを先に確認します。
適正な指導
業務上必要かつ相当な範囲の指導とハラスメントは区別されます。実際の言動と状況を踏まえて考える必要があります。

優しさと成長不安を分ける

リクルートワークス研究所の2022年の調査では、大手企業の新卒入社から3年目までの36.9%が、このままでは成長できないと感じていました。若手全体の回答であり、優しい上司の部下だけを調べた数字ではありません。[s1]

会社の調査で見る若手の成長不安

グラフ

新入社員が思う、理想の上司像(複数回答)

安心して意見や質問ができる雰囲気
29.6
ミスをしたときにフォローしてくれる
26.0
常に部下を気にかけてくれる
23.2
仕事を任せてくれる
12.8
厳しく指導してくれる
10.4
いちばんの望みは、安心して関われること

出典:産業能率大学総合研究所「2026年度 新入社員の理想の上司」(2026年4月・500人)

職場を「ゆるい」と感じる人の中での62.6%という数字は、古屋星斗氏の分析として紹介されています。対象集団の異なる割合を、そのまま上司の優しさの影響と読み替えないことが大切です。[s2]

管理職側の制約と育成の機会

リクルートワークス研究所の管理職調査では、育成と労働環境改善の両立や、成長に十分な経験の提供を課題とする回答があります。上司が厳しくないことだけでは、任せる判断や支援の状況までは分かりません。[s4]

管理職が感じる育成上の課題

グラフ

若手の育成で課題に感じること(管理職・複数回答)

自分の頃と同じに育てられない
34.4
育成と労働環境改善の両立
31.4
成長に十分な経験を渡せていない
29.1
ハラスメントと思われないか不安
23.7
上司も、育て方に迷っている

出典:リクルートワークス研究所「大手企業管理職の若手育成に関する定量調査」(2023年3月・1,083人)

必要なのは仕事量を増やすことだけではありません。少し難しい課題、新しい知識、振り返りの機会など、仕事の質を確かめる視点も紹介されています。[s3]

指導とハラスメントの境界を確認する

厚生労働省の指針は、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワーハラスメントに該当しないと説明しています。注意されること自体を一律に悪いと考える必要はありません。[s9]

指針で確認する適正な指導

公式の資料から引用
厚生労働省 パワハラ防止の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)p.2
  • 3つの条件が全部そろうもの
  • 適正な指導は該当しない
出典:厚生労働省 パワハラ防止の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)p.2

一方で、人格を否定する言動や、必要以上に長時間の厳しい叱責などは、実際の状況を踏まえて検討されます。困った場合は言動や日時を記録し、相談窓口に確認してください。[s9][s13]

次の仕事と振り返りを具体的に頼む

次に担当したい仕事と、終えた後に確認してほしい点を具体的に伝えてみましょう。自分が得たい経験を明らかにすると、上司も任せる範囲や支援の方法を相談しやすくなります。

成長の機会を相談する手順

手順

成長するための3つの動き

STEP 1
具体的に聞く

改善点を3つ教えてください

STEP 2
取りにいく

少し難しい仕事に手を挙げる

STEP 3
外のものさしで見る

求人票・診断・相談

担当業務と身についた力を定期的に振り返り、必要なら他部署での経験や学びも検討します。働きやすさを大切にしながら、次に得たい経験との差を少しずつ埋めていく考え方です。

実践のポイント・まとめ

POINT 1

いい感じだよ、で 終わっていない?

上司の側も、理想の指導の仕方を知りたい人が、いちばん多いです。Job総研の調査の結果です。

1分のショート動画で見る
POINT 2

強く注意されたら 全部パワハラ?

ただし、判断は個別の事案しだいです。迷ったら、総合労働相談コーナー。無料で、予約もいりません。

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POINT 3

求人票を1枚 読むだけの診断

×が多くても、落ち込まなくて大丈夫。今の弱点が見えただけです。×をひとつ選んで、それを経験できる仕事に、今月手を挙げてみてください。

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POINT 4

残業は少ないのに 成長が見えない

どちらかに「はい」なら、手を挙げる価値があります。残業を増やす必要はないです。同じ作業が増えても、手応えは同じです。

1分のショート動画で見る

出典・参考文献

検証ファクト一覧を表示する(全19項目)
ID 確認した事実・仕様 出典 注意・補足
F1 大手企業(従業員1,000人以上)の新卒3年目までの36.4%が、現在の職場を「ゆるい」と感じる(あてはまる8.4%+どちらかと言えば28.0%) [s1] 2022年3月・ワークス研の調査。「ゆるい」は労働時間・負荷が高くなく成長実感も低い状態(古屋さんの定義)
F2 上司・先輩から叱責される機会が「まったくなかった」30.4%+「年に数回程度」22.3%=52.7% [s1] 同じ調査・大手の若手
F3 「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」36.9%(全体)。「ゆるい」と感じる人の中では62.6% [s1] [s2]
F4 「別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」45.6% [s1] 全体。「ゆるい」人に限らない。若手の気持ちで、実際に通用しないかではない
F5 成長実感と関係があるのは、仕事の量ではなく質(難易度が少し高い・新しく覚えることが多い) [s3] 古屋さんの説明(研究結果として紹介)
F6 新入社員の理想の上司像:安心して意見や質問ができる雰囲気29.6%・ミスのフォロー26.0%・気にかけてくれる23.2%。仕事を任せてくれる12.8%・厳しく指導してくれる10.4% [s5]
F7 新入社員が上司に期待すること:一人ひとりに丁寧に指導50.1%(初のトップ)、言うべきことは言い厳しく指導24.0%(3年連続で上昇) [s6]
F8 若手(1〜3年目)の自己都合退職125人が挙げた実際の離職理由:労働環境・条件22.4%、仕事で能力や持ち味を発揮できない21.6%、希望する働き方19.2%。給与水準は2位→6位(8.0%) [s7] 退職者のみ。差は小さい。会社の調査
F9 部下の62.3%が上司との関わりで困っている。困りごと1位「指示が曖昧」43.2%。言われたくない言葉1位「言わなくても分かるでしょ」46.8% [s8] 421人のうち部下387人・ネット調査。会社の調査
F10 上司の69.9%が部下との関わりで困っている。困りごと:主体性を感じにくい46.3%・指示待ち45.3%・注意・指摘がしにくい40.0% [s8]
F11 管理職の課題感:自分の頃と同じように育てられない34.4%、育成と労働環境改善の両立が難しい31.4%、成長にとって十分な業務経験や機会が提供されていない29.1%、ハラスメントと思われないか不安23.7% [s4]
F12 日常業務のフィードバックを「ほとんど・全く」行わなかった管理職は14.6%(毎日・週1回は45.9%)。今後のキャリアのアドバイスは「ほとんど・全く」34.7%(毎日・週1回は19.3%)。「若手に仕事をさせるより、経験のある社員に任せることが多い」30.5% [s4]
F13 指導のとき「ハラスメントにならないように行う」にあてはまる+どちらかといえばが81.0% [s4]
F14 パワハラは3つの条件が全部そろうもの。業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しない [s9]
F15 該当すると考えられる例:人格を否定する・必要以上に長時間の厳しい叱責を繰り返す・大声での威圧的な叱責を繰り返す。該当しない例:再三注意しても改善されない遅刻などに一定程度強く注意する [s9] 個別の事案で判断が異なり、例は限定列挙ではない
F16 上司に聞きたいこと(部下)は「自分に期待していること」38.0%。上司が知りたいことは「理想の指導の仕方」48.5% [s8]
F17 キャリアに関する主な相談先(正社員)は上司・管理者69.5% [s10]
F18 ポータブルスキル見える化ツール(入力約15分・9要素・専門知識は測らない)。キャリア相談(無料) [s11] [s12]
F19 パワハラかもしれないときの相談先:総合労働相談コーナー(無料・予約不要) [s13]

※ 各調査は実施時期・対象者が異なります。成長不安は本人の意識であり、実際の能力や上司との因果関係を示しません。

※ 上司のタイプや行動の手順は説明のための整理です。個別のハラスメント判断には実際の状況の確認が必要です。